一般的に脱毛・薄毛の原因は、遺伝や生活習慣の乱れ、つまり食生活・睡眠の乱れ、過度のストレスや喫煙、間違ったヘアケアや頻繁なパーマ、白髪染めなどが考えられています。
男性の脱毛・薄毛は多く見られる症状です。その理由については、男性ホルモンが脱毛・薄毛に関係していることが知られています。
男性ホルモンは、肉体的、精神的な“男らしさ”をつくる性ホルモンです。ところがその弊害として、脱毛・薄毛を促す性質がありますが、直接的に脱毛・薄毛を促すのではなく、毛乳頭細胞内で男性ホルモンが酵素による影響を受け、最終的に脱毛・薄毛に至るのです。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは、血液によって運ばれ毛乳頭細胞に入ります。そこには「5α‐リダクターゼ」という酵素が存在していて、そこでテストステロンに作用し、DHT(ジヒドロテストステロン)という活性型の男性ホルモンに変化させます。 さらにDHTは毛乳頭細胞に作用し、髪の毛が休止期へと向かわせるタンパク質(BDNF、TGF‐β等)の分泌を促進します。 それらの作用によって毛包が退縮し、毛が抜けることが報告されています。 この一連の作用が男性ホルモンによる脱毛・薄毛のメカニズムと考えられています。
❶ 桑根皮が「DKK1」の作用を阻害する。※1
❷ 桑根皮が「TGF-β」の作用を阻害する。※2
❸ 桑根皮が「BDNF」の作用を阻害する。※1
❹ センブリが「BDNF」の作用を阻害する。※3
※1 ヒトフォトトリコグラム試験による生薬育毛剤の評価 ―桑根皮エキス配合育毛剤について― (日本生薬学会第61回年会 2014年)
※2 桑根皮の育毛作用について(日本生薬学会第52回年会 2005年)
※3 センブリの育毛作用メカニズムに関する研究(日本生薬学会第58回年会 2011年)
脱毛や薄毛は、血流が悪くなることで毛髪の成長期に太くて強い毛を作れなくなることや不潔な頭皮環境、生活習慣など、さまざまな原因がありますが、男性の場合は男性ホルモンが関係することがずいぶん昔からわかっています。
第二次性徴期を迎え、男性ホルモンが出てくると、男性は口髭、顎鬚、胸毛など、女性とは違う変化が起こります。これは男性ホルモンが発毛を促すほうに働くからですが、唯一毛の成長を阻害する方に働く場所があります。それが頭頂~前頭部です。若年でこの部分の脱毛や薄毛に悩まされている方は、この男性ホルモンの働きが原因です。
男性ホルモンの頭頂部の発毛への影響は、目に見えて薄くなる人もいますし、見た目には分からない人もいます。遺伝要因も取りざたされますが、まだはっきりとは解明されていません。しかし、誰もが男性ホルモンの影響を受けていることは間違いないのです。
口髭や顎髭の場合は、発毛を促す毛乳頭細胞に男性ホルモンがガソリンのような役割をし、働きを活発化させ、強く、太い毛を作り出します。しかし、頭頂〜前頭部ではその男性ホルモンが毛乳頭細胞の中で「TGF ‐ β」や「BDNF」といった脱毛因子の活動を活発化させてしまうことがわかっています。脱毛因子が活発に働いた毛髪は、細くてやわらかくなっていく、抜けていくことになります。
また、男性ホルモンは女性ホルモンと違って、年齢を重ねても減ることが少ないので、その影響が長く続いていきます。
頭頂~前頭部の脱毛や薄毛対策には、原因となる脱毛因子を除けばいいのですが、それは相当に難しいことです。
今回、「桑根皮」が「TGF‐β」や「BDNF」といった脱毛因子の働きを押さえ込むことを確かめたというのは、評価できることだと思います。
毛根に酸素と栄養を届けるために、頭皮の血流をよくすることは大切なことですが、脱毛因子にターゲットを絞ってアプローチするということは、これまでほとんどありませんでした。
脱毛因子の働きを抑制するメカニズムの研究は、新しい視点の男性の育毛法として期待できるのではないでしょうか。
男性ホルモンの影響は長く続きますから、若年のうちから脱毛、薄毛が気になる方は、早いうちからケアしたほうがいいのは間違いありません。